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出資してもらう事は怖いことではない。起業を目指す人が知っておくべき資本政策5つのパターン。(1)

スクリーンショット 2014-11-09 17.41.44事業の知識は持っていても、資本政策の知識を持っている起業家はほとんどいない。さらに言うと、大企業の法務にも殆どいない。もっと言うとシーズインベストで使かわれているCE(コンバートイクイティ)などの特殊なツールとなると弁護士でも知らない人は多い。活用する絶対数が少ない世界だからだ。
創業者(会社の設立者で、通常は社長を兼務している人)が投資家に乗っ取られて追い出されたとか、これから起業しようとしている人にとって投資受入にブレーキをかけるような負の情報が多い。特に負の情報はネタとして広がりやすいからだ。
そこで、これから起業したいと思っている人のために、過剰に警戒したり、騙されたりしないように資本政策のポイントを目指すゴール別に5つのパターンに分けて整理したので起業予備軍は参考にして欲しい。
 
資本政策の鍵となるのは2つ。”支配力”と”目標とする事業の成長速度”だ。支配力。会社という器に関して相続を意識して自分の所有物として考えるか、独立して巣立っていく子供のように支配はできないモノとして考えるか。2つ目の目標とする事業の成長速度とは、ゆっくりと育てるか、数年で上場できるような急成長させるかだ。この2つの切り口の組み合わせで、資本政策の選択肢が異なる。
1)創業者が株式を100%所有するオーナーパターン(支配力◎、成長速度×)
成長はゆっくりでいいので、誰にも文句言われない自分だけの会社として完全に支配したい人向き。第三者に理解されにくい新しいビジネスモデルやサービスに挑戦してみたい場合、あえて事業を拡大したくない場合、一度事業で成功してある程度資金をつくってからの2度目の起業の場合、プライベートカンパニーにしたい場合などだ。

 

ディメリットは創業資本(最初に持っている自分のお金)が事業のための投資額の上限なので、お金持ち以外の人は、事業を爆発的な速度で成長させる事は難しい。また大きな初期投資が必要な事業はできない。結果として、限られた事業を時間をかけてゆっくりと成長させていく事になる。
メリットは、自分ですべて決められる事だ。外部の株主(投資家)がいないので、株主向けに面倒な稟議書や提案書をつくったり、アクションを起こす時に承認を得る必要が無いので意思決定が敏速になる。シナリオ通り順調に成長さえすれば創業者のストレスは皆無だ。事業は、未来が見えないので本質的には社長個人の”肌勘”となるため、そういった意味では理解されにくいビジネスモデル、サービス、プロダクトに向いている。

創業資本以外の資金としては、直接金融(資本)ではなく、間接金融(融資)となる。銀行や公庫などからの借入だ。ちなみに、銀行の場合には、殆どのケースが担保を要求されるので、不動産などの担保価値のあるモノを持っていない人は難しいので政府の支援制度を使う。注意したいのが、融資は返済しなくてはダメな金だが、出資は返済しなくてもよい金であるということだ。

 


2)創業者が株式を51%以上所有するパターン(支配力◎、成長速度◯)

爆発的な成長速度で成長させられる事業で、永続的に支配したい人向き。

候補となる投資家は、主にイクジット(株式の売却で利益を得る)を目的としたベンチャーキャピタル、エンジェル。

 
このパターンで資金を投資家から調達できるのは、経営者(組織をまとめあげて動かす人)事業家(ビジネスモデルそのものを考える人)いずれの能力に関しても高い資質を持った創業者で、かつ、取組む事業の市場、事業共にスケールする(急速に成長する)可能性がある場合に限られる。
メリットは、特別議決が必要となるアクション(会社の合併などの大きなアクション)を除いた殆どのアクションの最終決定を創業者が決められる事と人事など全てにわたり高い支配力を持てる。ただ、上場していない限り顔が見える特定の投資家のお金を預かっているので、会社法とは別契約で報連相(報告、連絡、相談)やアクションの拒否権は出資されるときの条件として付けられる事が多く、大きな投資を許可無く自由にはできない事の方が多い。他人のお金を使っている以上当然の事だ。

ただ、自由度が下がる代わりに、自己資金では得られない大きな資金を手に入れられるので、事業の成長速度が速くなる。

また、投資家も会社を成長させたいという想いは創業者と一致しているので、事業会社、ベンチャーキャピタル、エンジェルなど全ての投資家が、なんでも協力してくれるようになる。

このシナジーはお金以上の価値を産む場合が多い。特になかなかアポが取れない人とパイプを持っている投資家と組むと人的なパイプは営業面、提携面で絶大の威力を発揮するので、誰にお金を入れてもらうかということがとても重要だ。

 

3)創業者が株式49%以下所有で筆頭株主でもないパターン(支配力×、成長速度◯)

事業会社とのシナジーを得たい人。

候補となる投資家は、主に事業上のシナジーを必要としている事業会社だ。

 

投資家が事業会社で、その事業会社の連結子会社になることによる事業上のシナジーがある場合に有効だ。僕が創業したKDDIウェブコミュニケーションズもこのタイプとなる。ホスティンサービスはインターネットのインフラサービスなので、回線を持っているKDDIの子会社となるメリットは大きい。
連結子会社となるため、親会社は子会社の収益の最大化に全面的に協力してくれる。ただ社長というよりも、実質は親会社の担当者の下に位置付けられた比較的権限を多く持てる中間管理職であるという認識に変えた方が株主である親会社との関係が良好となる。

親会社の事業戦略次第で自由度は大きく変わる。ただ、スケールしない事業であっても、投資家である事業会社の事業ポートフォリオ上必要であると判断されると支配のための出資を行う。話がまとまるかどうかは、相性とタイミング次第なので、運の要素が強い。

保有している株式が49%だと特別決議(合併などの大きなアクションの拒否権)しかなくなる。そのため最初に51%を事業会社に持ってもらう場合には、第三者割り当て(会社にお金を入れてもらう)ではなく、株式譲渡(創業者の株式を買ってもらう)にして、創業者個人にお金が入るようにする方がオススメだ。
最初の51%の譲渡時は交渉が行えるが、セカンドラウンドの49%の株式は親会社の指値となると考えておいた方がよい。もちろん、第三者の投資家を連れてくるなど、法的に交渉するテクニックはあるが、法的に戦うと親会社との関係を壊すことになるので、オススメできない。ちなみに、親会社との関係を壊すと、力のある親会社の場合には、今後の関係性も失うことになる。
僕は今でもKDDIの田中社長とはノーアジェンダで毎年二人で楽しく食事をさせていただいている。良好な関係性だからできることだ。その価値は大きい。
 
4)創業者の株式は49%以下の所有だが筆頭株主となるパターン(支配力◯、成長速度◯)
支配力を持って、かつ、たくさん資金調達したい人。
候補となる投資家は、主にイクジット(株式の売却で利益を得る)を目的としたベンチャーキャピタル、エンジェル、または支配までは必要としないが事業上のなんらかのシナジーを期待している事業会社。
 
創業者が30%、投資会社Aが25%、Bが25%、Cが20%等といった資本構成となるパターンだ。創業者が議決権の過半数(51%以上)を持っているわけではないが、議決権の絶対数は1番多いので、他の株主が結託しない限り、経営判断の最終決定権を持てる。実質支配力があり創業者が描いた戦略通り進めることができる。
ただ、このような資本政策を組み立てるためには、複数の投資家からバランスも考慮しながら入れてもらう必要があり、それぞれの投資家と強力なパイプを持っているか、事業そのものの魅力度が高くて、参加しないと不利益さえあると思える場合に限られるので、やれる創業者は限られる。5つの中では一番バランスが取れている理想的なパターンだ。
投資家を増やして創業者が筆頭株主の地位を維持しつつ、実質の株式のシェアを小さくすればするほど、大きな資金調達がしやすくなる。例えば、ほかの株主のシェアを10%以下にすれば、創業者が10%のシェアであっても実質支配力としては51%のシェアを所有した時と同じように決定する力を持てるというわけだ。

上場すると、株主の数が増えるので、このようなスキームを実現しやすい。

賛同してくれる投資家さえ見つかれば、実質の支配に加えて多額の調達することが可能となるので、ダイナミックな事業投資ができる。

 

5)創業者が実質自己資金ゼロで、数%の株式を所有するシリコンバレー流スタートアップ(支配力×、成長速度◎)

死ぬほど仕事して爆発的な速度で会社を成長させて、社会に大きなインパクトを与えたい人向き。

候補となる投資家は、主にイクジット(株式の売却で利益を得る)を目的としたシーズインキュベーター、ベンチャーキャピタル、エンジェルだ。

→起業を目指す人が知っておくべき資本政策5つのパターン。(2)へ。

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